私が国際協力を仕事とし始めて、今年で7年。 学生時代からの関わりを入れると11年目になる。
そんな中、本日参加したスタディツアーはこれまでの活動の中で最も充実したスタディツアーだった。
*以下の訪問体験記は、鈴木の記憶に基づいて記載しているため、誤りがある場合があります。ご留意ください。(関係者の方で誤りを発見された場合は、お知らせいただけますと幸いです。)


社会起業の最先端を知る
2013年に京都で株式会社Ridilover(リディラバ)がはじめた社会起業に関わる人々のカンファレンス、Ridilover-Social Issue Conference(R-SIC)というイベントがある。2013年度に招待を受け、2014年度は現在非常勤で働いている国際NGOの職員としてお招きを受けた。2015年度は、これから自分自身で活動を新たに始めるにあたって、社会的課題に情熱を注ぐ人々のアイディアや姿勢からインスピレーションをもらいたかったので、NPO枠で参加をした。
 

過去2年になかったスタディツアーが遂にカンファレンスの企画に!
もともと、リディラバは2009年に一般社団法人として誕生したことに代表の安部ちゃんとの出会いが発端だ。彼は理念を体現することに長けている人で、「無関心を打破する」ということを掲げていた。メッセージと彼の情熱は鮮烈に記憶している。
(彼は、日本の市民社会セクターでも屈指の面白い話をする人なので、ぜひ話を聞く機会があれば参加するといいと思う。私も滑舌がよく、もう少しハンサムだったら彼みたいになれるのかと思ってしまう・・・)
私の中でのリディラバのイメージといえば、社会問題を構造的に捉えるためのスタディツアーである。社会問題の現場に赴き、それぞれの立場から問題に触れ、構造を理解したうえで、問題と向き合う、また、そうした課題に関心のある人たちがその後もつどい、問題意識が高まるという仕組みを構築していた。(記憶が正しければ・・・) 

そんなリディラバが主催するR-SICも今回で3回目。なんと、今回は3回目にして初めてスタディツアーが企画に含まれた。そんなこともあり、今回のR-SICは期待も高かった。


他の参加者と共にスタディツアーが開始!
朝、会場に到着すると、スタディツアーの訪問先ごとに分かれて席が配置されていた。早速、自分が向かう先になっていた「自然再生」の座席についた。ツアー訪問先には、他にも「ユニバーサルデザイン」「文化継承」「殺処分問題」「出産と子育て」「障害者福祉」「社会福祉(保育)」「農業」「環境保護」などが用意されていた。
イベントは安部ちゃんの(いつもの通り)テンションが高めの挨拶ではじまり、スタディツアーを一緒に回る方々との自己紹介を行った後、さっそく、バスに乗り込みスタディーツアー先への訪問となった。


社会を変えるエッセンスが詰まった訪問先-成功体験を分かち合うって市民社会を強くする-
私が参加した「自然再生」のスタディツアーはNPO法人アサザ基金の活動を見学した。 本音を言うと、訪問する前に「自然再生」も単純な「緑化」活動をしているんじゃないかなって思っていた。(大変、申し訳ありませんでした。) しかし、アサザ基金さんが行っている取り組みはむしろ社会全体を変えるというエッセンスが詰まっていた。アサザ基金さんの詳細な活動などは実際にボランティアなどで参加されて聞いた方が学びが高いと思うので、ここでは詳細には触れないが、過去7年間、日本で国際協力という分野で人々と共に活動をしてきて、このブログにも記載してきた日本社会の特殊性をうまくとらえ、また、彼らの活動は人に注目した活動を有機的につなげていた。

社会変革は、社会を変えることであり、社会とは人々の集合体である。
ゆえに、社会を変えるというときには、人々の認識、価値観、行動を変えていく必要がある。また、その規模は一部の愛好者のみが参加すればいいというものでは社会は変わらず、より多くの人々にリーチする必要がある。

特にアサザ基金さんの活動の中で非常に感銘を受けたのは、地元の小学校での取り組みだ。
授業の中で、小学校の隣にある耕作放棄地の自然再生を行っているのだが、それを正面から行うというのではなく、まずは自然を知ろうというスタンスで子どもと共に耕作放棄地を訪れ、楽しみながら子どもたちが耕作放棄地を巡り、最終的には自然再生をするための事業提案までもっていくという流れだった。 もちろん、ただ事業提案するだけならば、他の地域でも政策提言もしているだろう。 私が感銘を受けたのは、ここでは、実際にプランを作成し、自治会長や市役所の職員を呼び発表を行い、その後、市長や他の学年、地域の人々を呼び発表会を実施、市からの(市の所有地である耕作放棄地への作業の)許可を得て、さらには、測量と工事も子どもたちが行うという点だ。
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小学校の横にある耕作放棄地。かつては土砂などが投げ捨てられていたが、小学生たちの直接・間接の活動によりこんなにきれいになった
Photo By Yoichi SUZUKI



授業の中だけのシティズンシップ教育は何も変えない を超える!
以前のシティズンシップ教育の投稿でも記載したことだが、どんなに授業でリーダーシップやシティズンシップを促しても、授業が終わり、日常生活に戻った際に、その属する社会が子どもたちに対して、一つの主権者として話を聞くことをしなければ、また、その行動の成果が見える化されなければ、実感としての「認識」の獲得には至ることは難しいと考える。(開発教育に関わる教員の方々と話した際にもそうした指摘があった。)
アサザ基金さんの活動を聞き、非常に感銘をうけたし、なによりも「わくわく」した。 私は自然再生の分野で活動はそこまで主体的には行っていない(マレーシア時代に青少年啓発でかかわった程度だ)が、社会を変えるという点で、その取り組みの姿勢には非常に多くの同一性を見いだせたし、何よりも、勇気がわいた。
データはとっていないと言っていたが、個人的には、自然再生活動に関わった子どもたちのその後の進路や社会問題への参画の度合いなどが非常に気になった。

*また、子どもたちが事業を作るときの合意形成は、多数決は絶対行わずに、話し合いを重ね、最終的にはその場の共感をベースにしている点の強みを話されていた。肩書などに問われない感性に真正面な姿勢というのも特に自然を相手にしている際には重要なのかもしれないし、我々も大きく学ぶ部分があった。


世代の分断を紡ぐ、それも共感をベースに!
シルバーデモクラシーという言葉が使われている日本社会において、常々感じていたことは、シニア世代の人数が多いというだけでなく、世代間の対話の難しさだった。 欧米で活動をしていれば、年齢に関係なく友人はできやすいし、そうした人間関係の中から友人のシニアの方が抱える問題だからこそ、他者の問題が他人事ではなく、自分事もしくはそれに近いものになってくるのではないかと常々考えていた。そうした機能を果たすコミュニティの機能が著しく弱くなっているのが今の日本ではないかと・・・。
アサザ基金さんが霞ヶ浦の自然再生に取り組むという際に、昔の霞ヶ浦の姿を知らせる資料がないということで、霞ヶ浦周辺のエリアの小学校と協力をして、小学生が地元の福祉施設にいるシニアの方々の子ども時代の霞ヶ浦についての情報をインタビューするという方式をとった。これは私的に分析すれば、シニアの方々は子ども時代の思い出をストーリーテリング(物語)する作業であり、当時の生活や遊びなどを伝えるという点で、インタビューしている子どもの認識の理解を得やすく、共感も得やすい行程なのだろう。
霞ヶ浦は大きな源流となる川がなく、谷津田のような水源が無数にある。よって、一か所で問題を対処できるという課題ではなく、周辺地域全域での活動が必要で、そのため、エリアごとに存在する小学校の協力を得ることが重要だったと話を聞いた。
小学校という存在が、日本のコミュニティを巡る現状から考えても、人々をつなぐ存在になりえたのだと思うし、また、子どもが参画するからこそ、その周囲の大人を変えることもできるのだと改めて思った。
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自然再生の事業は小学校だけでなく、企業の巻き込みも成功している。こちらの水田も企業の社員が休みなどを利用して耕作放棄地をここまで変えた
Photo By Yoichi SUZUKI


蛇足的には・・・
よく言われることだが、英国では開発教育を学校教育で導入したことにより、その後、国民の中での人権や平和、貧困に対する意識が高まった。こうした人々の認識や価値観が変化したこともあり、英国には大規模な活動をしている国際NGOが存在し、フェアトレードや社会企業、CSRなどの面でも多くの支持や投資があるように感じる。また、こうした社会だからこそ、ワン・ダイレクション、レディオヘッドのトム・ヨーク、コールドプレイなどのアーティストの社会問題への関与も高くなるのだろう。

社会を良くも悪くも変えるのは人であり、だからこそ、人に着目して活動することが大切なのだと思う。
また、人を変えるのは正論以上に、人間的な魅力という点も忘れてはならない。
今回、お話をしてくれたアサザ基金の方は非常に公平な方で、また人を引き付ける魅力をお持ちの方だった。オーストラリアのフェアトレード・アクティビスト育成のワークショップで言われたことが再び頭をよぎった。

「社会を変えるというとき、それはあなたの性格や文脈からはじまる」

社会変革を人々の大衆活動として発展してきた欧米でも、こうした人間臭いことが言われている、であれば、社会正義をはじめとした社会の目指すべき概念に関する合意が人々の中で低い日本社会では、社会的課題に関わる私たちにはそれ以上にこうした人間的な対話が重要なことのようにも思える。


社会問題に携わる参加者だからこその学びの多いスタディツアー
さらにさらに、今回のスタディツアーの充実度を高めたことは、参加者自身が社会的課題に関わっている人たちであるということだろう。 多くの参加者が「自然再生」以外の震災復興、海外支援、環境問題、企業の対外関係部門など、 異なる分野で社会的課題に向き合っている方々だった。 そうした人たちが、アサザ基金の「自然再生」の素晴らしい取り組みを見て、感じて、その中で、考えたことや自分の取り組んでいる課題との相違点などを踏まえたうえでディスカッションをしていたため、社会的課題に関わる知の総結集が疑似的に行われているようで、非常に刺激的だった。
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スタディツアー後に参加者で訪問先の活動の分析を行った
Photo By Yoichi SUZUKI

特に私が参加したスタディーツアー先が素晴らしかったこともあるのだが、こうした分野を超えた成功体験や手法、認識の分かち合いは、必ず社会問題に関わるセクターを強くするだろうし、以前の記事に書いた、アメリカやオーストラリアにおける社会変革を目指したカンファレンスにも通じることがあった。
 
R-SICの傾向的に、社会運動モデルではなく、サービスデリバリーやビジネス的なモデルに参加者の思考が向かいやすいという点はあったけれども、それでも同じく社会問題に取り組んでいる人々との時間は私に多くの活動のヒントとインスピレーション、そして、何よりも、自分の活動に対する多くのモチベーションを注ぎ込んでくれた。

Yes, Social Change is SUPER FUN! 


今回のスタディツアーは、参加費以上の価値が溢れていた。
こうした、人を勇気づける企画って素敵だ。 



最後に宣伝
こんな素敵なスタディツアーを企画した会社の代表であり、「天才だな」と思っている(が本人の前では言わない)安部ちゃんが先日本を発売しました。 リディラバや安部ちゃんに関心があるという人はぜひ読んでみては? 


安部 敏樹著 『いつかリーダーになる君たちへ』

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1日目終了時に安部ちゃんと一緒に
Photo By Yoichi SUZKI