2015年9月19日(土)-20日(日)に気候変動に取り組む世界的なムーブメントである350.orgが主催するDivestmentワークショップが東京都内で開催された。
私はフリーランスのファシリテータとして今回は関わった。

Divestmentって?
Divestmentとは、投資差し戻し運動のことで、かつてアパルトヘイト(人種隔離政策)を行っていた南アフリカに対して、同国政府関係の企業に対する投資から撤退するようにアメリカを中心とした大学で起こった運動である。大学は集めた学費などを元手に資金運用を行っており、その投資先として南アフリカ政府関係の企業があった。
現在、欧米圏では、気候変動を悪化させる石炭関係の企業などに対する投資差し戻し運動が行われており、こうした活動を日本でも広めていけないかということでDivestmentワークショップが開催されることとなった。 
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(Photo by Yoichi SUZUKI)

気候変動はなぜ大事なのか
1日目冒頭のセッションでは、なぜ気候変動が重要なのかを話し合った。 死活的な問題であり、今行動しなければならないことや世代間を超える問題であるという意見から、多国間の強調が必要でその国際交渉自体に対する興味を持っていること、ビジネスの可能性を示唆していることなど多様な声が集まった。

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(Photo by Yoichi SUZUKI)

キャンペーンのステップ
私はこれまで複数のNGOのキャンペーンに関するセッションを見てきましたが、350.orgのキャンペーンステップも興味深いものでした。 

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(Photo by Yoichi SUZUKI)

Goalとして何を求めるのかを明確にしたうえで、意思決定者やそこに影響を与えるための道筋に関するPower Analysisを行い、そして、どのような時に変化が起こるのかという仕組みを認識する。(Theory of change)
こうした考えは他の団体でも似ているのですが、それを達成するために必要な活動の順番という概念をCritical Pathというタイトルで入れ込んでいるのは面白かった。ほかの団体の場合は、順番自体を細かく記載していることが多いように感じる。そして、これらの最後に具体的なメッセージングや実際のアクションが入っていた。

海外での変革事例
350.orgの強みはSNSなどを利用し、世界で同じような思いを持った人々が有機的につながっているということだ。今回のワークショップでも、スウェーデン、イギリス、オランダでDivestmentを働きかけているメンバーから話を聞くセッションが設けられた。
それぞれの国とはインターネットでつなぎ、各国での成功体験に参加された方々は耳を傾けていた。

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(Photo by Yoichi SUZUKI)

スウェーデンでは、大学を対象にDivestmentを行っている若者が活動を紹介した。主に大学に対して行っている活動として、大学の投資委員会に対するデモなどの抗議活動を含めた直接行動、学生団体などと協力して大学内政治に働きかける政治工作、そして、大学内の新聞などに意見を載せたり、賛同する教授たちの協力のもと公開書簡を発表するなどのキャンペーンの3つの活動を展開している。

イギリスでは、地方自治体を対象にしたDivestment事例の紹介があった。
住んでいる町に対して、町の持つ資金の投資先に対するDivestmentを目指した活動であり、主に以下の2つのアプローチをとった。1つめは、医療系の団体を通じた発信活動。2つ目は町での草の根活動。
まず、実施者の男性は医療関係の仕事をしているらしく、町で権威のある医師たちの協力を得て、彼らからDivestmentに対する発信をしてもらった。町での草の根活動については、地域のアーティストなどのコミュニティと協力して行政に対してメッセージの発信をした。

オランダの事例では、年金基金を対象にしたDivestmentの紹介があった。
年金の資金運用先として石油や石炭系の会社からの差し戻しを求めてのアクションで、署名を1万人程度集めて働きかけをした。結果として、基金と対話の場を設けることにも成功した。
特に発表をしていた方が強調していたこととして、詳細がわからない状況であっても進めながら理解していけばよく、行動することが大切であり、分からないのであれば、わかる人を仲間にするなどアプローチを工夫すればよいことをあげていた。
なお、年金基金の規模は日本が最も大きい基金となっており、日本での年金基金への働きかけを期待しているとメッセージを寄せてくれた。

海外と日本のギャップを埋める
イギリスの方の発表の後、日本とイギリスの社会的背景の違いを明確にしたいといくつか質問をした。
海外の事例は非常に元気を与えてくれるが、同じことをすれば、日本でも成功するという単純なことではなく、両国間の社会的な違いを認識し、日本で広める際の工夫点を知る必要があるだろう。そこでこの観点から以下3点の質問をした。

1. 公共空間で政策的な話をすることに抵抗はないか?
完全に抵抗がないということはないが、難しいことではなく、話をすることはできる。

(日本ではカフェやパブなどで政策的な話をする環境は整っていないように感じ、そうした話題はむしろ避けられる傾向にあると感じる。また、欧米圏では、見知らぬ人々がカフェでおしゃべりをすることもあり、そうした違いも鑑みる必要があるだろう。)

2. 行政に公的に働きかけることは一般的か?
他にも多くの働きかけがあり、一般的だ。
(日本では行政への働きかけは一般的な選択肢になりにくいため、日本との違いとして最初から選択肢に入る環境であることも認識しなければならないだろう。)

3. 市民の反応は協力的か?
話をした99%は協力的だった。ただし、しっかりと話をする内容を詰めてから伝えた。
(話をすることができる機会や場所もあることを特筆すべきことだ。日本ではそもそも多様な人々に話をしていく環境が整っていないように思う。こうした問題を自分事にしていくことにも努力が必要となるだろう。)


日本の壁は何か?
2日目の冒頭で、前日の海外事例の紹介や参加者の方々が活動するうえで感じる日本社会での活動するうえでの壁について話し合いをした。

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(Photo by Yoichi SUZUKI)

どういった背景で人は認識をしているのか、それを理解することは社会に働きかけをするうえで抑えるべき点だ。

メッセージは何か?
その後、日本における大学や年金機構、地方自治体、保険会社、銀行などの資金運用についてのブリーフィングを受けた。(内容については、追って350.orgより報告が発表されるとのことなので、こちらでは控える。)
そして、Divestmentを日本から行うために、対象別に働きかけの最適な方法やメッセージを考えるアクティビティを行った。

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(Photo by Yoichi SUZUKI)

一人ひとりが行動する
日本では、Divestmentという概念や人々が働きかけていくということは一般的に定着はしていない。ただ、だからと言って全くもって日本で展開ができないということでもないだろう。 目の前にいる友人や知人に話をして、賛同を得て、一緒に活動を広めていく、基本的にはそうした小さな活動の連続が運動を大きくするものだ。
Divestmentのワークショップは日本で初めての開催となったが、今後、活動が大きくなっていくことを期待している。

私もフリーランスの社会変革/グローバル・リーダーシップのファシリテータとして、出来る範囲でこうした社会参加の動きをサポートできればと思う。