20181125日より30日までの6日間にわたって、ニュージーランドの主要都市の1つであるオークランドにて、ASPBAE(Asia South Pacific Association for Basic and Adult Education)主催の基礎的なリーダーシップトレーニング(Basic Leadership Development Course;以下BLDC)が開催され、評議員を務めるNPO法人 開発教育協会のメンバーとして参加してきました。

ASPBAEは、アジア及び南太平洋地区の基礎教育及び成人教育に関するネットワークで、BLDCの参加者はアジア及び南太平洋にて基礎教育や成人教育(生涯学習、シティズンシップ教育)にかかわるNGOに属しているアクティビストを対象にしたもので、参加者は19歳から60代後半までおり、主な参加者層は30-40代でした。

DSC_0029[1]
「受付の写真を撮りたいので、それらしい雰囲気をお願いします」と言って撮影したし写真。今回のBLDCのホストはace aotearoaという団体で、非常に気さくな人が多かった (Photo by Yoichi SUZUKI)
 今回のBLDCの特徴として、南太平洋地区の参加者の多さと中国からの2名の参加がありました。会場となったオークランドの南部地域、南オークランドは全世界で最大の南太平洋の人々が居住しており、さまざまな社会的課題を抱えている都市でもあり、会議室の中で終わらせるのではなく、地域に生きる人々と教育のかかわりについてのフィールドワークも用意されていました。

今回のBLDCを通じて、特に印象的会ったことの一つにマオリをはじめとした、その土地の伝統的文化を大切にするという方式がとられていることでした。1日目にオークランド空港近くにあるTe Manukanuka o Hoturoa Maraeにて開会の式典(pōwhiri)が行われました。マオリの伝統的な方式に従って会場に入り、その場所を治めるマオリの方々とBLDC運営者と参加者の代表者のマオリ語での掛け合いがありました。 また、BLDCの大切なコンセプトとして、”AKO”というタガログ語の紹介を受けました。AKOとは、「誰もが教師であり、また誰もが学習者である」という考え方で、立場に関係なくお互いに学びあうという姿勢を表したものでした。

DSC_0047[1]
開会の式典(pōwhiri)が行われたTe Manukanuka o Hoturoa Marae (Photo by Yoichi SUZUKI)

こうしたアジアや南太平洋に固有の言葉をつかって展開していく中には、植民地化とその中で社会を変革していく際の根拠を外部に求めるのではなく、内的価値観に位置付けることで、自らの「自己肯定感」をも高めていくということが意識されているようです。SNSなどで「ハーバード式~~」などに代表される「北欧」や「西欧」の手法について見かけることがある中で、こうした自分たちがもっている文化的価値観を行動原則の根本に置くということは非常に重要なように思いました。そして、日本社会で活動を行う場合も、自らの文化的背景の「再発見」が必要あろうと思いました。

最後に、BLDCのトレーニングは、簡単に説明します。

1日目(25)は開会式(pōwhiri)が行われ、続いて、参加者が自分の国とその国について説明をしつつ自己紹介を行い、また、名前のアルファベット順に並ぶというアクティビティ、さらには、ASPBAEを知った年代の順に並ぶというアイスブレイキングを行いました。 4-5人の学習グループ内での活動の動機についての共有、ASPBAEの説明、BLDCに対する期待と恐れの分かち合いと歓迎パーティがありました。

DSC_0110
BLDCに対する期待と恐れに関する話し合いの様子 (Photo by Yoichi SUZUKI)
 DSC_0146
歓迎パーティの様子 (Photo by Yoichi SUZUKI)
2日目(26日)はASPBAEの中心的価値観、現代の社会問題としての気候変動や分断、それに伴う教育を巡る課題についてのブリーフィング、(参加者が事前に共有していた)アジア及び南太平洋地域を中心とした社会問題の啓発や解決に向けた行動を促す意識喚起の動画紹介、SDGsとSDGs4の紹介、SDGs4と他のゴールの関係性に関しての理解を高めるアクティビティを行いました。
 DSC_0226
アイスブレイキングで伝達コミュニケーションをテーマにしたゲームを行う参加者 (Photo by Yoichi SUZUKI)

3日目(27)は午前に6つのグループに分かれてオークランド及び周辺地域で地域コミュニティにて教育関係の活動をしている団体への訪問を行いました。午後には各グループが訪問した団体の取り組んでいる問題、取組、そして、学びについてまとめ発表を行い、ゲストによるフィードバックを受けました。

DSC_0279
訪問先の1つであるDo Good Feel Good (Photo by Yoichi SUZUKI)
DSC_0303
Do Good Feel Goodは南太平洋の人々の多い南オークランドにて地域の若者を中心に置いた働きかけを行っています (Photo by Yoichi SUZUKI)
4日目(28日)は大きく分けて、SDGs(持続可能な開発目標)におけるResilience(しなやかさ)とその教育分野におけるResilienceのReactive(状況に対する事後的対応)、Proactive(適応的な対応)、そして、Transformative(システム自体の変更)な状態に関するブリーフィング、グローバル・シティズンシップについての説明とその構成要素としての3つのH(Head: 構造的理解とクリティカルシンキング、Heart: 他者との関わりや環境の中で育まれる社会とのつながりの意識や多様性を尊重する気持ち、Hand and Foot: 倫理規範と政策決定にどのように働きかけるかという技術)を育むことの重要性についての説明がありました。 ジェンダー平等に関するブリーフィングでは、SDGsが権利ベースアプローチを軸においていることの説明、ジェンダーや性別に関する思考の整理を行ったうえで、隣接地域ごとに集まりそれぞれの国で抱えているジェンダーに関する課題共有を行いました。そして、グループごとに共同作業に関するリーダーシップスキルトレーニングが行われました。 4日目は夜に文化紹介の時間が設けられ、それぞれの社会や民族における文化紹介を行いました。

DSC_0416
前日の学びについての説明を図解する参加者 (Photo by Yoichi SUZUKI)
DSC_0480
ジェンダーに関する問題を表す演劇を行う東南アジアグループ (Photo by Yoichi SUZUKI)
DSC_0558
夜に行われたカルチャーナイトでは、それぞれの文化紹介を行いました (Photo by Yoichi SUZUKI)
 5日目(29日)はParticipatory Action Research(参加型アクションリサーチ)の紹介があり、他者が2-3質問しただけですべてを理解することは難しく、当事者たちが自らの参加することの重要性が伝えられました。 そのうえで、ユース主導の参加型アクションリサーチとしてASPBAEが行っている事例やBLDC参加者が行っている事例の紹介がありました。 その後、アドボカシーについてのブリーフィングが行われ、アドボカシーが政策やシステム変更のためのプロセスであること、そして、アドボカシーと他の活動(ファンドレイジング、コミュニケーション、ネットワーキング)の違いについての説明が行われ、BLDC参加者がかかわっているアドボカシー活動についての共有がグループごとに行われました。 昼食を挟んで午後には、交渉に関するアイスブレイキングを行い、翌日に2人1組で行う交渉に関するトレーニングの説明を受けました。 その後、オークランド市内にある博物館への市内見学ツアーに向かい、ニュージーランドとマオリの歴史についての理解を深めました。

DSC_0763
博物館では、マオリとニュージーランドの歴史と文化に触れました (Photo by Yoichi SUZUKI)
最終日となる6日目(30日)は、ゲストスピーカーとしてサモア系のCity Councilの委員による「痛みからの行動換気」と題する講演がありました。 オークランドや南太平洋の人々を巡る歴史的に作り上げられた痛み、社会的な課題についての説明がありました。その後、前日より紹介をされていた交渉ゲーム(「家庭でのゲームの規制」「裁量労働制の導入是非」についての交渉ゲーム)が行われました。 続いて、隣接地域ごとに分かれて、「個人」「団体」として今後3か月で行うこと、そして、「地域」「国内」「国家間地域」においてそれぞれおこってほしい変化についての発表を行いました。 最後に、BLDCについての学びの分かち合いとBLDCの修了証を参加者が相互に授与をしあいました。
DSC_0806
City CouncilのメンバーであるFa’anana Efeso Collinsさんから特別ゲストとしてお話をいただきました (Photo by Yoichi SUZUKI)
DSC_0860
お互いの背中に貼った紙に応援コメントを書きあう参加者 (Photo by Yoichi SUZUKI)
DSC_0883
最後に円をつくり、お互いに修了証を授与しあいました。また、BLDC期間中、手話通訳が随時ついて行われていました (Photo by Yoichi SUZUKI)